レビュー
自然現象も、パソコンなどの電子機器も、基礎は量子力学である。その量子力学が発見されて、100年が過ぎようとしている。しかし、人類は量子力学を使いこなしているものの、それが一体何であるかは、誰も知らない。我々の感覚で直接感じることのできない微視的な世界であるから、それを言葉で記述しようとしても、人類は適切な言葉を持っていないのである。そこで、本書のような解説書がたくさん登場するわけだ。本書は、歴史的なエピソード、観測問題にまつわること、応用技術までの話題を盛り込んでいる。主な出来事に対しては、主要な人物の寄与を説明している。 量子力学の解説書を読んだことのある人は、本書のタイトルの「シュレ猫」をシュレーディンガーの猫のことだと思い、本書は量子力学の観測問題や実在についての解説だと思ってしまうだろう。しかし、先述の通り、観測問題だけを詳しく扱っている本ではない。難しい話題を分かりやすい解説をしようという著者の努力が感じられるが、苦労しているようだ。数学あるいは数式の説明など理解するのは難しいと感じた場合は気軽に読み飛ばしてもいいだろう。 量子力学の発展には多くの物理学者たちが関係していることが本書を読むと分かるが、そのほとんどが20代の人たちである。もし、中学生か高校生が本書を手に取ったのなら、将来、このような量子力学の建設に携わった人に負けないような物理学者になるように挑戦してはいかがだろうか。(村藤一雅)
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