カスタマーレビュー
警視庁への任官希望者に特に勧める西郷・大久保の懐刀として、日本警察制度の礎を創った川路利良の評伝。郷士としての誕生から大警視としての死までを追う.川路もまた、福澤諭吉の「一身にして二生」(一人で二人分の生涯を生きるということ)を体現した、維新功労者の一人であった。著者の文は読みやすく好感が持てる。内容的には、西南の役の「警視庁抜刀隊」の活躍の描写が、特筆すべきくだりだろう(ちなみに、この時戦況を左右した抜刀隊の活躍により日本刀の有用性は再評価され、近代日本剣道興隆の契機となった)。また巻末には、川路が警察官のあるべき姿をまとめた、「警察官の論語」とでも言うべき『警察手眼』が現代語訳され収められており、彼の思想を端的に知ることができる。ただ、所々で本編と直接関係ない著者の政治論!挿入されており、読書の興を殺ぐ。例えば、いきなり「…余談ながら、平成の今日では、日本の刑務所は、中国人犯罪者にとって快適なホテルのようになっている…」(p141)と、現代監獄事情に話が飛んだりする(現代警察論を論じたいなら、別に本を書くべきでは?)。こういう箇所が散見され、いまいちのめり込めないのが本書の欠点だ。また、厳密に歴史研究書として見た場合、特に目新しい視点があるわけではない。 以上の理由で、歴史研究書として読むなら星二つ、読み物として読むなら星三つ、警察官志望者が日本近代史の復習と「あるべき警察官像」を学ぶために読むなら星四つをつける。 私自身は、読み物として読んだので星三つをつけさせていただきます。
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