レビュー
どこかファンタジー風、少しシニカルな作風で、ミステリー界に新風を吹き込んだ著者の初めての詩集。駄洒落かワープロ変換遊びのような言葉遊びから、いつの間にか不思議な“魔的”空間に迷い込む。著者自身が撮影した写真も不思議世界に彩りを添えている。 1996年『すべてがFになる』でデビューして以来、すでに70冊もの著作があるという森博嗣。本作は多作で饒舌な著者の初めての詩集である。収録されている詩は、86編。見開きにオリジナル写真と書き下ろしの詩が掲載され、森ワールドが広がる。 著者は某大学の理工学部助教授というだけあって、叙情性のなかに、科学者の冷徹な観察眼を覗かせる。遅れただけで泣いてしまう少女や、恋人の輝きは実感していたのに魅力の元はわからない男性など、ささいな痛みにもろい現代人の心のすきまをよくとらえている。どこから読んでも期待どおりの森ワールドで、読み進んでいくと少々マンネリ感を否めない。「裏切りは生きている証」と詩のひとつに謳うなら、今までとはまったくちがう感覚を見せて読者を裏切ってほしかった。しかし執拗なまでな同じパターンが逆に読者を惑わせる。 「人間のように」と「呪文」という言葉が頻出するが、「生きている」という「呪文」に操られる人間と、それを他人事のように見つめる人間とは何なのか。生の実感さえバーチャルに思える感覚こそが、森的魔的空間の核なのだと教えてくれる1冊だ。(川瀬道子)
カスタマーレビュー
Magical Words魔的。まさにそのままです。 全部で86の詩があり、また86の写真が掲載されています。 空想ではない現実を、現実の言葉で書かれているのに何故か「ありきたり」と云う気持ちが全く湧きません。 1つ1つの言葉が呪文の様でどんどん詩の世界へ惹き込まれていきます。 今まで沢山の詩を読んできた方も、また読んだ事が無く初めての方もこの1冊はとてもオススメです。 是非御手にとって森 博嗣さんの世界に魅せられて下さい。ついにきたすばらしい。読まないとわからないが読んだこの感動を伝えたかった。 読んでもわからない人もいるかもしれないがやはりいろんな人にこそ読んでもらいたい逸品。
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