カスタマーレビュー
斬新さはないが今読む価値がある自由、民主主義、近代国家そして経済発展とは手放しで賞賛すべき我々の理想なのか。人類は歴史を通じてこれらの進歩を獲得してきたことは確かだが、管理社会、大量消費社会といった人間性の後退を暗示する現象が起こってきていると指摘する。これらは、様々な学者が以前から繰り返し唱えている事だが、変化がより加速している21世紀に、人としてどう生きるべきかを考え直すためには参考になる。また、開発に携わる人間としては、途上国がどういう方向に向かってゆくべきなのかを深く考えさせられる。佐伯氏の研究テーマを体系的に学べる本佐伯啓思氏の京都大学での講義を書籍化したもの。 ホッブズ、ルソー、ウェーバーなど近代西欧思想を佐伯氏ならではの切り口で論考する。こんな講義を「一般教養」として学べる京大生がうらやましい。 書評は下巻が出てからまとめて書きたいが、なかなか発売されない。なぜ。売れてないのかな。近代の世界の成り立ちをやさしくかたる近代の世界の成り立ちをさまざまな重要な思想家の意見を引用しつつ描き切る。とても、わかりやすい内容。特に、後半部分で説明されている近代的個人の成立の歴史がわかりやすく面白い。たとえば、「近代国家」の成立の一つの説明として、ルターによる宗教改革(境界を否定し、聖書のみ信じる)→ローマ教会の権威に対抗するために聖書を各国語に翻訳(ルター派は迫害により散らばったのでドイツ語以外にも多数翻訳ができる)→教会の権威の外に各国語民俗集団が確立する→「近代国家」の成立。など。 アメリカ独立革命と、フランス革命が対照的に論じられ、アメリカはローマ共和国を範にとったもので、何もないところに新たな「権力」を作りだし、それをみなで求めると言う健康的な革命であったのに対し!フランス革命は貧しい市民のルサンチマンに支えられた、「権力」を忌避する不健康な革命であった、という。
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