カスタマーレビュー
美術館で愛を叫ぶ…著者が美術館経営論の大家であり、私自身も美術館・博物館に関わっているので買ってみたが…。大半は著者のヨーロッパ、アメリカ旅行記である。キレのいい文章の割には、欧米美術館万歳、日本美術館はちょっとねぇ…、という感情がミエミエ。しかも、著者自身は「日本にいるときは仕事でやむをえない場合を除いて、滅多に美術館や博物館に行くことがない」らしい。文章から美術館・博物館への「愛」は感じられるが、こういった関係の本や文章を書くのであれば、自ら「嫌悪している」日本の美術館・博物館に脚を運ぶべきであろう。ただ、レビュー・タイトルのような行動をとると即座に放り出されるような雰囲気が国内の美術館・博物館にはあるが、最近は来館者も自由におしゃべりしている特別展などにも出会うようになった。絵画や遺物、工芸など美しいもの、使い方のわからないものなどを見ながら思ったことを話し合ったり、想像したりすることが自由にできるような雰囲気の美術館・博物館が多くなることを望む。 美術館論として読むには物足りない。欧米の美術館と食紀行として読んだ方がいいのかもしれない…。2000年代の日本が今求めるガイドブックです営業向けのタイトルだけど、著者の恵まれた経歴を見る限りもっと深い思索を促す本に違いないと思い、あえて冒険のつもりで買ってみました。感想は、”1980年代の斉藤澪奈子さん”が高級なフリルをつけて戻ってきたかのようでした。いくつもの重要な視角(ベルリンの部分)に本能的に気づきながらも、social engineeringに疑問を抱くことのない著者は、基本的な部分での欧州の美術や美術館の持つ闇に接近することには成功していないようです。著者が”ウイーンは眠たくなる街”と評しているのはその意味で非常に象徴的です。結果として、今の日本で新しく生まれてきた購買層向けの”海外美術館ガイドブック”以上のものではないようです。ニューヨークの部分は、逆説的に、アメリカ社会の病理の描写に成功してます。数多く織り込まれているanecdoteもさりげなく高度な自己プロモーションがすべて計算されておりその手際には感服します。でも何度もどこかで聞いたステレオタイプの話なんで、わざわざ入れなくてもよかったのでは。恋人を誘って、美術館へ行こう。「美術」、「芸術」というと、とかく難しいもの、理解しがたいもの だと思われがちだが、好きか嫌いかの基準で、気軽に観て欲しいと 本書は示唆している。エッセイ形式なので、肩の力を抜いて、気軽に 読み通すことが出来るだろう。あとがきで、著者は「美術館へデート に行って愛を語れ、という呼びかけを目的として書いた本ではない」 と書いているが、私は、デート・コースとしての美術館の利用方法も 有りなのではないかと思う。いろいろな人々が気軽に集える場のような 美術館を日本にも期待したい。
|