カスタマーレビュー
面白いです大学の教養課程での講義をベースにした作品のようです。しかしその中身はかなり深く、いくつかの20世紀の大きな問題をわかりやすく整理しながら扱っています。特にその中心をなすのは西欧哲学と近代の持つ二律性とニヒリズムの現代での不可避性です。ナチズムが西欧哲学のひとつのlogical derivativesであるという指摘やファシズムについての多面的な理解の必要性の部分は、より深い思索を促します。最後のアメリカの技術優位主義が、ニヒリズムの極致であるとの指摘は必ずしも目新しい部分ではありませんが、現在生起している出来事のより広い視野からの整理の必要性を示唆します。現代の金融市場のニヒリズム性については、おそらくもうひとつの本が必要だったのかもしれません。もちろん本書の中には、回答なるものはありませんが、ニヒリズムの不可避性の認識からこそすべての出発点があるとの指摘は、humble ながらも現実的です。こんな講義が私も大学に入学したときに聞きたかったと思わせてくれる本です。「西欧近代」がもつ非情な逆説に真正面から挑んだ傑作。西欧近代」がもつ相容れない二面性については、すでに、ホルクハイマー/アドルノ『啓蒙の弁証法』において明らかにされたが、さらに、あのヴェーバーも、『プロ倫』の最後でも、意味深長なことを述べている。これらの問題は、20世紀から21世紀へ託された宿題である。同時に、これらの問題は、固有名詞のそれではなく、人類普遍的問題なのである。良い本だと思う。
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