レビュー
ソフトウェア開発のスピードは増す一方で、不確定要素や要求の変更はあたりまえのように発生する。誰もが変化を実感していてさまざまなルールやタスクを設けるが、うまくいかないまま苛烈な状況に落ち込むことも少なくない。 本書には、そんなソフトウェア開発プロジェクトの変化を柔軟に受け入れ、かつ創発的なプロジェクトに変えていくためのヒントが豊富に含まれている。従来のソフトウェア開発の極端な例として、「記念事業的ソフトウェア開発」と「場当たり的ソフトウェア開発」の2つの概念を提示し、そのどちらでもない新たな開発モデルを目指す。 具体的なメソッドを提示するというよりは、プロジェクトのフレームワークを掘り下げていくことに本書の主眼は置かれている。とはいえ、堅苦しく抽象的な概念論に終始するのではなく、全編を通じて、的確で豊富な比ゆが読者のイメージを膨らませ、幅広い内容に反して意外なほどあっさりと読み進むことができるのが特徴だ。「プロジェクト終了時に開発チームが心身ともに健康であること」のように、開発効率を追求する一方で、人間への配慮も忘れない。特に第12章はプロジェクトマネージャ必読と言えるだろう。 あらゆる組織にはそれぞれに特徴があり、成功への最短距離もそれぞれ異なる。本書の思想をうまく既存の組織に取り込み、それぞれの成功を目指してほしい。(大脇太一)
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