レビュー
優良企業におけるイノベーションがはらむ落とし穴を実証し、衝撃を与えた名著『イノベーションのジレンマ』待望の続編。イノベーション論を深化させ、研究者らの間に一躍広まったクリステンセン教授の理論のさらなる展開を本書に見ることができる。 前作では破壊的な技術革新を受けて優位を脅かされる側の企業に置いていた視点を、今回はその技術革新で新事業を構築し、優位企業を打ち負かそうとする側に置いている。この「破壊される側ではなく破壊者となって」という立場が本書の特色である。そこでは技術革新にかかわる実務者にとって、より明快な行動指針が得られるだろう。実際に、どうすれば最強の競合企業を打ち負かせるのか、どのような製品を開発すべきか、もっとも発展性のある基盤となるのはどのような初期顧客か、製品の設計、生産、販売、流通のなかでどれを社内で行い、どれを外部に任せるべきか…というような、きわめて具体的な意思決定の「解」が提出されている。 「無消費への対抗」など、次々に展開される破壊的イノベーションの局面は興味深く、そこでのマネジャー個人の行動やモチベーションまでカバーする理論はマネジメントの視野を確実に広げてくれる。事例となる企業や市場は、IBM、ソニーなどの常連から「クイック・サービス型レストランチェーンのミルクシェーク」などまで多彩で読みごたえがある。日本企業に「破壊」される米国市場を取り上げてきた著者が言う、「日本の経済システムは構造的に新たな破壊的成長の波の出現を阻害している」という提起も示唆的だ。さらなる読解が期待できるテキストとして、また、イノベーションやマネジメントの指南書として必携である。(棚上 勉)
カスタマーレビュー
お値打ちものです一般的に学者が描くビジネス論文は、蓋然性に基づく現象の抽出と、個々の現象の論理的整合性の追求によって纏められる為、結果として抽象度が高くなってしまい、事実を説明するには都合が良いが、実務上は「役に立たない」ものが多い。ところが、この本は極めて現実的であり、実際的である。おそらく文中にも記載があるように、かつてクリステンセンが経営に携わった経験があるからだろうと思われる。将来「ビジネス名著」として読み継がれる予感がする。 ところで、昨今喧しいアーキテクチャー論においては「モジュール化」と「モジュラー化」を峻別して使っており、当然意味も異なっているが、この翻訳ではモジュラー化と訳すべきところをモジュール化としていることが気になる。英文上は名詞と形容詞の違いだけだが、少なくとも日本においては異なった概念として扱われている。あるいは事情承知の上での翻訳かもしれないが。unarguable. The sequel to the hugely successful 1997 book "The Innovator's Dilemma", by the Harvard Business School professor who "terrified many bosses with financial death by a thousand internet clicks". This one written in the same style, and containing a multitude of points unarguable in their obviousness and abstraction (see Editorial Reviews above). Then again, such is what most management books are and what they are for--not to provide the golden key which suddenly unlocks all doors facing the corporate executive, filling him with burning passion to remake the company from top to bottom after the weekend that he reads the book. Rather, it is more a re-examination of concepts which must be kept in mind . . . And with greater breadth of vision resulting, hopefully better management, with tangible results. Best suited for management guru loyalists. .状況という視点が新鮮だった 著者らの理論は意思決定者は合理的に正しい判断を下すが、その判断に使った価値基準やプロセスなどが状況に適合しない場合には意思決定者の合理性がむしろ失敗を呼び込み、状況を適切に判断し価値基準やプロセスなどをうまく適合させることでその失敗に対処しようという物だ。 長期にわたって成長を持続させるというテーマを扱っているためトップマネジメントや新規事業担当者・起業家(予備軍)などに薦められる事が多くなりそうな本だが状況の区分を元にした理論という視点を学ぶ上で非常によい本なので、私は既存事業の担当者などにも役立つと思う。
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